星と祭

今週末は、滋賀県高月町で「観音の里ふるさと祭り」がある。今年行くか行かないかは、まだ決めてないけどいつか行ってみたい祭りだ。
高月町と言えば、渡岸寺観音堂向源寺)の十一面観音立像がある町。この十一面観音は、日本に七個しかない国宝指定の十一面観音。とっても美しいのです。
高月町をはじめとして琵琶湖畔には、観音様がたくさんあるので有名で、そうした観音巡りを一つのテーマとして扱ったのが、井上靖の「星と祭」。琵琶湖畔の仏像ネタを集めているうちに出会った一冊です。

星と祭〈上〉 (角川文庫)

星と祭〈上〉 (角川文庫)


はじめは、どんな仏像が紹介されているのかワクワクしながら読んでました…が、仏像ぬきにして、どんどんストーリーにのめり込んでしまいました。この本は文句なしに名作です。主人公「架山」が娘の死を受容する心理的過程が丹念に描かれており、人の死とは何か、人生とは何かということを考えさせられました。架山は、結局、ヒマラヤでの観月から得た宇宙論的なニヒリズムと、観音巡りによる宗教的な救済、そして、運命論的な考えによって、娘の死を受け入れられるようになります。これが、井上靖の出した人生に対する答えなのでしょうが、この答えに同意できずとも、この本は読む価値ありです。
優れた文学とは、哲学的な問題をより身近な問題として実感させてくれ、自分の日々の生活に深みを与えてくれる。そういうものだと実感させてくれた本でした。
哲学的な問いというものは、共有することが中々難しい。そのハードルをさげてくれるのが、優れた文学だと思いました。


もちろん、琵琶湖畔の仏像もたくさん出てくるので、仏像目当てでも紀行文的に楽しめると思います。
解説にかいてあったんですが、この物語は著者が向源寺の十一面観音に出会ったことをきっかけに生まれたみたいです。その出会いについて、書かれた本があるそうでそっちもぜひ読んでみたい。

美しきものとの出会い (1973年)

美しきものとの出会い (1973年)