冬休みの読書

毎年、実家に帰るとすることがなく、だらだらとテレビを見ながら本を読むというのが正月の過ごし方だ。昨年までは、大学院にいたということもあって、論文であったり、割と堅めの本が多かったのだが、今年はソフトな本が多かった。社会人一年前として学ぶことはたくさんあるだろうに…それでいいのか??という突っ込みは痛いところ。今の自分には、強烈な目的意識というのが欠如していて、自分でも危機感はちょっと感じているのです。そんなこんなで、正月には、キャリアについて考えなくもなかったけれでも、とりあえず読んだ本のメモ。

理性の限界

2か月くらい前から積読していた本。K.アローの「不可能性定理」、ハイゼンベルクの「不確定性原理」、ゲーデルの「不完全性定理」のさわりを何人かの登場人物の対話形式で紹介した本。それぞれのテーマだけでも一冊の本がかけてしまうくらい深い内容であるから、この本で扱われているのは当然さわりだけだが、対話形式という形であったために、なかなか面白く読むことができた。

理性の限界――不可能性・不確定性・不完全性 (講談社現代新書)

理性の限界――不可能性・不確定性・不完全性 (講談社現代新書)

自分はずーっと真理であるとはということにこだわっているところがあって、この手の本が好きだった。でも、もうそろそろ卒業しなきゃいけないのかなとも思う。こうした問題を考えている余裕が今の自分にはない。もっと実用的かつ実践的な知識を身につけなければいけない。不確定性原理不完全性定理は間違いなく、僕の世界観を根底から覆した理論なのに、いまだにそれを言語化できていない。消化不良を起こしている。早いうちに、これらに理論から、自分はどういう世界観をもって生きていこうと思ったのかを言葉にしたいと思う。

無限論の教室

最近、無限の話をしていて、自分の無限についての理解も怪しいもんだと感じ、この本を手に取った。


「有限の線分のなかには、無限の点が存在するか?」


この問いに多くの人は、「イエス」と答えると思う。こうした立場は、「無限」というものが存在すると考える「実無限」という立場だそうだ。一方で、「ノー」と答える側の人は、「可能無限」という立場。「こんなん、どっちでもいいじゃん」と最初は思ったけれでも、どちらの立場かによって、集合論の基礎概念である「濃度」に関する理解やカントールが用いた対角線論法の有効性に対する理解が変わってくる。大学時代に対角線論法を習ったときは全く疑問に思わなかったけれでも、指摘されてみると、たしかにカントール対角線論法には問題が潜んでいるような気もしてくる。

無限論の教室 (講談社現代新書)

無限論の教室 (講談社現代新書)

僕のような門外漢かつヘタレの人間は、実用上の問題から今後も実無限の立場をとっていくことになるのだろうけれども、無限にも2種類の考え方があると知れたことで、ひとつ世界観が変わった気がする。

螺鈿海道

チーム・バチスタの栄光の著者の三作目。兄が読んでいたので借りて読んだ。バチスタとかとつながる作品で、医療ミステリー。推理小説的な色彩は薄い。週末医療をテーマとして扱っているということもあって、色々考えさせられる内容ではあったけども、小説としては駄作なような気がした。何より文章が読みづらい。そして、オチもいま一つ。伏線が複雑に絡まりあって、最後にストンと落ちる傑作ミステリーを読んだときのそう快感が感じられなかった。

螺鈿迷宮

螺鈿迷宮

でも、バチスタは話題だったし、読んでみたいかも。

この金融政策が日本経済を救う

非常に偏った内容なので、金融政策「入門」としてはお勧めできる本ではない。論争中の問題を決着済みのこととして自説を展開したり、事実誤認があったりと、知的誠実さにはかける本。ただ、リフレ派と呼ばれる人々には受けがいいみたいなので、彼らの思考回路を知るにはいいのかもしれない。

この金融政策が日本経済を救う (光文社新書)

この金融政策が日本経済を救う (光文社新書)