本の感想

本書は、日銀物価研究会がまとめたもので物価とは何かとか、物価の変動メカニズムについてコンパクトにまとめられた本です。発行は1992年とやや古いですが、入門書としては非常によい本だと感じました。上記の問題意識に答えるほどの情報量はありませんが、物価安定の意義や、物価統計の読み方、物価統計間の関係など基礎がきっちり固められたように思います。
今後は、デフレはなぜ悪なのか、なぜ日本は長らくデフレなのか、に問題意識をもう少し絞ってを考えていきたいと思います。
以下、備忘録的に、いくつか気になった点を記しておきます。

物価指数の機能

1.通貨購買力指標としての機能、2.景気動向指標としての機能、3.デフレーター機能の三つが上げられていました。最近では、CPIでは、1の機能も重視されていますが、CGPIなどでは、1以外の、2、3の機能が重視されているように思います。
日銀は、CPIインフレ率1%を目処としていますが、CPIが本当に望ましい指標なのかどうか、僕にはまだ理解できていません。

物価安定の意義

このあたりは、2、3ページの記述にとどまっていたのが残念。よく言われている、所得や資産配分の不公平、不確実性の高まりによる企業や家計活動の抑制があげられていました。前者については、マクロ的にどう影響するのかがよく分かりません。後者については、デフレ安定していれば、不確実性という問題がないように思います。

物価は経済の体温計か?

よく、物価は経済の体温計であると言われます。これは、需給が引き締まれば物価が上昇し、需給が緩めば物価が下がるということをさしています。より理論的には、需給ギャップと物価に相関があるというフィリップスカーブで表現されるわけですが、日本におけるフィリップスカーブのフィットは必ずしもよくないように思います。
本書でも、需給以外の物価変動要因として、コスト要因や輸入物価要因などが挙げられていました。また、最近のニューケインジアンの議論を踏まえれば、期待インフレ率も重要なファクターとなるようです。
こうした要因をキレイに取り入れたフィリップスカーブの推計って、どなたかやっていたりするんでしょうか。。

ヘドニック・アプローチ→快楽的方法?

かなり本筋からは離れますが、面白かったのでメモ。「ヘドニック」はもともと、快楽的という意味だそうです。。これを直訳すると、快楽的方法となってしまい、いかがわしいので、そのまま英語を使っているそうな。ヘドニックといって、ピンとくる人も少なそうなので、明日使えないトリビアです。


次は、本書の著者の一人である内田真人さんの「デフレとインフレ」という本を読んでみたいと思います。